痛風と高尿酸血症の成り立ち

ヒトは尿酸が溜まり易い

痛風は分り易い病気なのですが、その原因となる高尿酸血症は、大変分りにくい病気といえます。痛風は、血液や体の中に尿酸という物質が増えて、その尿酸が関節に沈着して炎症を起すことで名付けられた病気です。多くは腎臓障害を起しますし、それだけではなく、いろいろと全身的な病気を合併してきます。尿酸という物質はプリン体から出来ています。このプリン体とは、動植物の細胞の核や染色体の中に見られる核酸という物質の成分です。又、細胞の中で簡単なアミノ酸や炭酸ガスを原料として合成されるものです。食物中の肉類が腸で消化吸収されるときに、その成分であるプリン体も尿酸となります。
図1 プリン体の体内での動き
図1 プリン体の体内での動き

この尿酸は、腎臓の働きで排泄されるのですが、ヒトでは腎臓への排泄が非常に限られているために、体内に蓄積されやすくなっています。つまり、血液中に尿酸が増加した状態(高尿酸血症)がもともと起こりやすい訳です。
ヒト意外の哺乳類では、尿酸を、さらに分解する事ができるので、尿酸が最終の代謝産物として腎臓に排泄される訳ではないのですが、ヒトの場合には尿酸を分解する酵素が体内に無いため、核酸やプリン体が分解された時には、尿酸が最終的に尿に出される排泄物となります。痛風や高尿酸血症といわれるヒトでは、体内で作られるプリン体や尿酸が多いか、食事などから入ってくるプリン体が多い方でも低い腎臓からの尿酸の排泄が、痛風の人では正常な人よりも減少しているなど、いくつかの原因のうちの一つ、あるいは二つ・三つが重なり高尿酸血症や痛風になっているのです。
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人間は尿酸を分解する酵素を持っていない

痛風は尿酸値が高いために起こるものですが、その原因は単純ではありません。体の中の尿酸が増加すると、体の組織の中では尿酸は溶けにくくなり、特に、手足の関節の部分では尿酸ナトリウム(尿酸塩)という物質が針状の結晶として溜まりやすく、その為、関節炎が起こってきます。尿酸を分解する酵素(尿酸分解酵素)を持っていない動物は、ヒトと類人猿だけです。猿以下の哺乳動物では、体重1kgあたりの尿酸産生は犬でヒトの十倍、ハツカネズミでは、実に百倍というほど、ヒトよりも細胞の代謝が盛んです。しかし、これらの動物では尿酸を分解する酵素が、肝臓や腎臓にあるため、尿酸は速やかに分解され、血液中の尿酸が増加する事はありません。したがって動物では尿への尿酸の排泄は少なく、大部分の尿酸はアラントインやその他の物質に分解されて尿中に排泄されます。
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尿酸が結晶になる条件

尿酸は体内で多すぎると、尿酸そのもの、あるいは尿酸の塩類として結晶になります。どのような状態の組織で結晶が出来始めるのかは、未だ良くわかっておりませんが、次のような事までは判明しています。尿酸値が高くても、血液中のように蛋白質の多いところでは、蛋白質が保護作用を持っているので結晶は出来ません。尿酸はまず第一に蛋白質の少ないところで結晶になります。
耳たぶとか、炎症の起きていない関節や尿の中などがそれにあたります。
第二に酸性かアルカリ性かということがあります。尿酸は酸性のところでは、その溶ける濃度(溶解度)を簡単に超えてしまいます。酸性度の高いところには、炎症の起きている関節の中や、その周囲の組織、腎臓から出てくる尿路などがあります。尿の酸性度は、摂取したアルコールや食物によって一日の中でも大きく変化しますが、一口に言えば、高尿酸血症や痛風の人では一般に尿の酸性度が正常のヒトよりも高く、尿酸が腎臓から尿路にかけて結晶になりやすいと考えてよいでしょう。
図2 尿酸の酸性度と尿酸の溶解度
図2 尿酸の酸性度と尿酸の溶解度

第三に組織の温度が低いところでは結晶が出来やすいようです。たとえば、耳たぶや手足の先のほうなどです。最後に、よく動かすところが挙げられます。よく動かすところでは組織が酸性のほうに傾くわけで、手足の先、関節部分、特に肘の延びる側、膝の関節の前方などがこれにあたります。尿酸ないしは尿酸塩の結晶が出て来やすいのは、以上の四つの条件のうちいくつかが重なりところで、手足の先の甲の側、特に足の親指の付け根、肘の伸びる外側、膝の前側、耳たぶ、関節の中、腎臓の出口(腎盂という)などがそれにあたります。
血液中の尿酸値が血液100ml中7.0r(一般に尿酸が高いといわれる値)を超えている状態が長く続くと、尿酸はついにその溶解度を超えて結晶になり、組織にとっては異物となるのです。さて、この血液中ないしは体液中の尿酸の値ですが、ヒトでは血液100ml中6.4r以上の値では、理論上は過飽和といってそれ以上の尿酸は溶けにくく、体の組織中に析出しやすくなります。
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