| 血液中や組織中の尿酸値が正常値の上限からさらに1.0rほど高くなると、尿酸は組織や関節内で結晶になりやすくなります。尿酸の結晶は針状の尿酸ナトリウムですが、この結晶は炎症を活性化させる化学的な物質(ケミカルメディエーター)を活性化します。最近はさらに、この尿酸の針状結晶によって、プロスタグランジンや活性酸素などが組織や白血球から放出されて、毛細血管が拡がってその透過性が高まり、その部分の血液量の増加が起こるといわれています。一方で尿酸ナトリウムの針状結晶は、身体にとって異物であるため白血球に食べられます(貪食(どんしょく))。貪食した白血球はエネルギーを消費して局所が酸性化するために、尿酸はいっそう結晶化しやすくなります。これらの詳細は大変に難しく、完全には説明されていませんが、尿酸結晶という異物に対する白血球や組織の反応、つまりからだの側の反応そのものが、痛風の関節炎であり、その結果、さらに骨や関節が破壊されるという悪循環が出来上がると考えられています。急激な尿酸値の上昇と同時に、歩いたり打ったりする程度の小さな刺激が加わると、血管から白血球が関節内に遊走してきます。そこに尿酸の結晶があれば貪食が始まります。最近は、白血球のうちで単球と呼ばれる種類のものが、結晶を貪食してインターロイキン(細胞の増殖や活性化を促す物質)を産生し、直接ケミカルメディエーターを産生するとも言われています。
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| 前にも少しふれましたが、大部分の痛風はその原因が明らかではなく(原発性)、環境因子としては食事中のプリン体(尿酸をつくる元の物質)やアルコール飲料の取りすぎなどが考えられます。古くは「ぜいたく病」といわれ、アルコールは飲めない、肉食は出来ないといった時代には、痛風は激減ないしは消失していました。現在の日本は、先進国として栄養過多で、痛風は、同じ関節炎症の関節リウマチよりも患者が多いほど、重要な成人病の一つになってきました。
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| 高尿酸血症だからといってすぐに痛風がおこるとは限りませんが、高尿酸血症になってから数年後に発病するといわれています。血液中の尿酸値7.0r/dL以上を高尿酸血しょうとすると、成人男子の20%は高尿酸血症で、痛風患者は60万人、高尿酸血症患者は痛風患者の約10倍になっています。痛風患者は働き盛りの30〜40歳代の男性がほとんどで、女性は男性の2%程度にしかみられません。酒豪家、肉食を好む人、肥満体の人などに多くみられます。ある種の高血圧治療薬を使っていると、痛風にかかる場合も少なくありません。体質、つまり遺伝性がみられる事も多く、本人以外に親兄弟などにも痛風患者が診られる場合が多いのです。 |
| 血液中の尿酸が多くなる、すなわち高尿酸血症になる原因には、いろいろありますが、5種類ほどに分ける事ができます。
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| 特殊な病気でおこる痛風は別として、血液中の尿酸値は男女で違い、又年齢や人種によっても違いますし、食事とも関係しています。したがって痛風の発病もそういった因子に影響されます。季節とも関係があるといわれています。また、痛風は遺伝するという事もよく言われています。さらに高尿酸血症になり痛風を発病する人の性格には、ほかの人とは違うところがあるとも言われています。血液中の尿酸値が上昇して、痛風を発病するまでには、かなり複雑な要因が絡み合っているようです。 |
| 男性では思春期に血液中の尿酸値が急激に増加します。値としては4rから6rへ、2r増加しますが、女性ではその年代に尿酸値は少ししか変わりません。男女の尿酸値はこのときに1ないし1.5r違ってきて、その差が後になって痛風が男性に圧倒的に多いということの原因になります。女性の尿酸値が上昇しないのは、女性ホルモンが尿酸を排泄させるからといわれています。ですから女性では、更年期になって初めて痛風が出てくるのが普通です。女性は本来、痛風とはほぼ無縁のはずなので、女性が痛風になるときには体質と遺伝素因が濃厚である。つまり、子孫に、たちの良くない痛風が伝わっていくと考えなければなりません。
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| 特別な原因が無い限り、男子の痛風の好発年齢は40〜50歳です。その時期までにいろいろな原因で高尿酸血症が10年ほど続いた結果として痛風が出てきます。しかし最近では、好発年齢が若い方へと移動しています。相撲の力士の間では、肥満以外には素因は無いのですが、若くして痛風を発症します。その他の一部のスポーツマンでも同様です。此れには食事と運動のバランスが関係しているのです。
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痛風は過去には裕福な人や知識人などに多いものでした。外国では高尿酸血症において、知能指数と尿酸値の関係は少なく、むしろ性格的な特徴があることが明らかになっています。ある報告では、管理職にある人や、科学者では尿酸値が高いとされています。また、工場閉鎖に直面した人々のうち、真剣に再就職を考えて行動した人々の尿酸値は、そうでなく失業者になった人々よりも上昇を示しました。大学教授では、積極性や指導力が豊で、活動範囲が広く、研究業績も多く、自己主張の強い人の方がそうでない人よりも尿酸値が高くなっていました。高校生では、課外活動の多いものに高尿酸血症が見られました。
尿酸値が低いグループでは職業感覚が非現実的で、高いグループは現実的意識を持っているとも言います。そのほかにも、高尿酸血症の人々には試験恐怖症が少なく、成功への期待が大きいとか、高校生で両親を殴る等のトラブルを起すのは尿酸値が高いほうに多かったなど、外国にはいろいろな報告があります。
尿酸値と精神機能ないしは知的活動との関係をまとめてみると、尿酸値の高い人では、自分で積極的にテーマを選び、行動力に富み、そういった努力には負担や不快を感じる事が少なく、試験や競争を好み、指導性があって成功に適しているという事になります。ただ、このような精神活動と関係が有るのは尿酸そのものか、それとも尿酸のもとになる、プリン体のある種のものなのかは明確ではありません。
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| 痛風は遺伝する病気といわれています。父親が痛風でその息子も痛風というのは、10〜20%と高頻度に見られます。此れには家族で同じような食事をするということが大きく影響しています。そのほかに、レッシュ・ナイハン病や、女性の痛風患者を含む痛風家系のような遺伝が主役を果たす特殊な痛風もあります。また、痛風ないし高尿酸血症は肥満した人に多く、過食あるいはアルコールの飲みすぎのため血液の脂肪、特に中性脂肪が増加している例が多く見られます。高血圧の人も多く、痛風と高血圧の体質は密接に関係しているようです。
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近年の日本人の食生活の変化、すなわち高エネルギー食、過栄養、動物性食品およびアルコール飲料の取りすぎなどが同時にプリン体の取りすぎにもつながり、痛風激増の最も重要な要因と考えられます。痛風患者は肥満して血液中の脂肪が増加している(高脂血症)例が多いことも、痛風と高エネルギー食の関係を示しているといえます。力士は肥満の代表といえますが、1日約5000キロカロリーの高エネルギー食をとり、痛風が高頻度に見られます。また、細胞の核を作るプリン体であるリボ核酸を1日4gもとると、尿酸は正常な人でも約2倍となり、ほぼ全員が高尿酸血症になるといいます。痛風患者の多くは入院して低プリン食(プリン体の少ない食事)にすると、尿中に排泄される尿酸の量は減りますが、外来で通院している場合は、どうしても低プリン食は好まないため、プリン体の摂取量が増加して尿中の尿酸排泄量も増えます。
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| 表2 入院および外来通院の痛風患者の1日尿中の尿酸排泄量比較 |
スポーツマンが過度の運動をすると一時的に高尿酸血症になります。筋肉運動は体内のエネルギー源(アデノシン三燐酸)を消費し、高尿酸血症を起しますが、この体内のエネルギーも当然、食物から補給されるものです。此れも激しい運動をするマラソン選手には肥満が無いのは勿論ですが、バランスの取れた食事も持続的な高尿酸にはならず、痛風にもならない事が示されつつあります。 |
次にアルコール飲料についてですが、ガロッドは既に150年前に、醸造酒が痛風の誘引として重要である事を指摘しています。大酒家が高尿酸血症を来たす事も知られていました。まず、アルコールの代謝産物である乳酸が、尿酸の腎臓からの排泄を抑えるため、高尿酸血症になる事が明らかになりました。近年になって、アルコールは、運動と同様に、体内のエネルギー源であるアデノシン三燐酸という物質の消費を促し、またプリン体の体内での合成も促すために、高尿酸血症になると考えられるようになりました。しかし、この体内エネルギーや核酸なども、やはり炭水化物、蛋白質、プリン体などの過剰な摂取によって補給されるわけです。最近になってイギリスのあるアンケート調査によると、痛風患者ではアルコール飲料のうち特にビールの摂取量が普通の人よりも多いことが示されました。ビールにはプリン体が含まれています。
つまり、ビールの場合は、アルコール自体の影響と中に含まれているプリン体の影響の二つが、高尿酸血症の原因になっていると考えられます。 |
| 高尿酸血症は、簡単に言えば、血液中の尿酸値が高いという検査上のデータ以外には、それ自体は何の異常も示さないのが特徴です。しかし、今までに痛風発作が現れていなくても、既に述べてきたように、いろいろな合併症を持っているのが普通です。むしろこの合併症のほうが、その後の健康上大変重要となってくるのです。 |
痛風は、関節炎以外の全体の経過で見れば、ゆっくりと進行する病気といえます。以下に、それぞれの時期別に分けて、経過を述べます。
a 高尿酸血症 前にも述べたように、血中の尿酸値には性や年齢による差、食事および運動による影響、一日のうちの変化および季節による変動などが見られます。成人については一般に次のような値が正常と考えられます。
・成人男子 4.0〜7.0r (平均約5.5r)
・成人女子 3.0〜5.5r (平均約4.5r)
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| 図8 日本における疫学的頻度 |
日本における疫学的頻度を上図に示しました。現在、日本では高尿酸血症については血液中の尿酸値を中心に考えるわけですが、組織ないしは血液中の尿酸値には、さらに低い限界があるという事にも注意が必要です。
b 症状の無い高尿酸血症の時期
痛風の素因、太る体質、高脂血症、腎臓の障害、高血圧、薬による尿酸値の上昇など、いろいろな原因のうちの一つまたは複数が重なると血中の尿酸値は高くなりますが、急性関節炎、腎臓の結石など、臨床症状がまったく無い時期があります。無症候性高尿酸血症と呼ばれています。この時期が5年から10年続くと考えられています。痛風の発病は、血中尿酸値が高くなるほど、その頻度も高くなります。外国の報告では、尿酸値が7r以上の高尿酸血症の患者を14年間観察した結果、痛風発作の頻度は、血中の尿酸値7.0〜7.9rでは16%、8.0〜8.9rでは25%、9.0r以上では90%であったというものがあります。無症状の高尿酸血症の時期でも、腎臓は障害されます。腎臓の障害としては、尿に赤血球や白血球、尿蛋白が出たり、腎臓の、尿を濃くする力(濃縮力)が低下したりします。これは、高尿酸血症の結果、尿中に出る尿酸が多くて溶けにくいために結晶となり、それが腎臓の尿細管を傷つけると考えられています。また高尿酸血症が続くと痛風になるのは当然として、痛風よりも早く高血圧や心臓病、肥満、糖尿病が起きるといわれております。
此れには、血液中の尿酸値が高い事が判明したときから注意しなくてはなりません。高尿酸血症は高血圧患者の腎障害の程度と密接に関係しているといわれています。高血圧以外に症状の無い人も多いのですが、このような人の腎障害の程度、特に腎臓の血管障害の程度は、血液中の尿酸値によく反映されるといわれます。高血圧で、高尿酸血症を示す人は、特に注意が必要でしょう。
c 関節炎発作
一見健康そうな男性に突然襲ってくる激しい関節炎それが痛風の特徴です。足の親指の付け根の関節が好んで冒される場所で、夜間に始まり左右どちらか片方に起きます。数時間内に赤くはれて痛みを生じ、翌朝は痛みのため起きて歩けないほどになります。関節の炎症から関節内に液体が溜まり、また関節の外にも炎症が広く波及します。それは細菌による関節炎や組織の炎症に良く似ています。炎症を起した部分の皮膚は赤く緊張し充血してきます。放置しても1週間以内にはまず痛みが減り始め、はれた後の皮膚にはしわが出来て色は暗赤色になり、軽い色素沈着を残して表面の皮膚がはがれた後、すっかり治っていくのが特徴です。発作には前兆が無いのが普通ですが、ごく軽い食欲不振、吐き気、局所のこわばりなどが起きる場合もあります。また、足の親指ではなく大きな関節に起きるときや、若い人の場合では強い全身の発熱を伴う事がありますが、多くは微熱しか出ません。発熱するほどのときは、血沈促進、CRP陽性、白血球の増加などが見られます。冒される関節部位は、最初は足の親指の付け根の関節が約70%と多いのが特徴で、ついで足首、足の親指以外の付け根、膝、肘、手指の関節などにきます。一つだけの関節炎のタイプが約80%で、両側が冒されたり、多くの関節に炎症が起こるタイプは10〜20%と少ないものです。ただし、長い間放置しておくと、腫れの範囲や腫れる関節の数も広がります。
d 腎臓や尿路の結石
痛風患者の腎臓結石の発症率は、一般の人よりもはるかに高いものです。腎臓結石は痛風患者の10〜30%に見られます。また痛風患者の20%では、関節炎発作よりも腎結石による突然の痛みの発作のほうが先に起こるといわれています。この結石は60%ほどが尿酸の結石ですが、後の40%ではリン酸、シュウ酸のカルシウム塩による結石が見られます。長い間痛風にかかっている人や、痛風結節が見られる人に多いものです。尿路結石による突然の腎臓部の痛みや尿に血が混じる事(血尿)などは、痛風のどんな時期にでも起きます。
e 慢性の関節炎の時期
一つの関節の急性発作が治りきらないうちに次の発作が起きるようになります。 つまり、慢性の関節炎が続いて症状の無い時期が不明瞭になってしまい、さらに急性に悪化する事があるようになった場合を言います。初めての発作からこの時期までは平均で12年かかるといわれています。一般に若くして発病した場合や遺伝性が強い例ほど、血中の尿酸値も高く、進行も早くなります。また、この時期には組織の中などに尿酸塩が結晶として沈着し痛風結節(次項)も形成されるので慢性結節性痛風とも言われます。骨や関節の破壊、関節の変形から脱臼による機能低下なども起きます。尿酸は腎臓にも沈着し、腎障害も進行します。そして末期には尿毒症で死亡する例もあります。
f 痛風結節
痛風結節は尿酸が軟骨や関節の周囲、筋や皮下の組織などに沈着して結節を形成するものです。血流の少ない部分に出来やすく、好んで耳介に現れます。
ついで足の指の関節付近、肘、手指、くるぶしの近くに出来やすいものです。
解剖してみると腎臓などの組織にも見られます。大きさはケシ粒ぐらいから鶏卵大までさまざまで、痛みは無いのが普通です。また指では関節の運動制限、変形が起こります。結節の内容物は白色で、大きくなったものでは皮膚が薄くなり、ついには破れておから状のものが出てくる事があります。痛風結節が存在すれば確実に痛風と診断できます。しかし、発病してからの年数が短い例では、結節は見られません。治療をしないでおくと、初めの関節炎から5年ぐらい経った人の約40%に痛風結節が見られますが、逆に10年以上経っても30〜40%の人では結節は現れません。痛風結節がどうして出来るかは、まだ明らかではありませんが、痛風では組織のムコ多糖体と蛋白とで作られる化学物質(プロテオグリカン)の代謝異常または変性により、尿酸の溶解度が減少して、尿酸ナトリウムが結晶として沈着するのではないかと推定されています。
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